9/11/2014

「一人の作家が一人の人物を生涯に三度、小説に書いたことがあります」

これは、現在(平成26年2014年) NHKで放送されている大河ドラマ「軍師 官兵衛」
の主人公、黒田如水を作家の吉川英治さんが小説にした 最初のシーンです。

~「黒田如水」 吉川英治・作 初出 1943年(昭和18年)1月~8月「週刊朝日」 朝日新聞社~










蜂の巣


太鼓櫓(たいこやぐら)の棟木(むなぎ)の陰へ、すいすいと吸いこまれるように、蜂がかくれてゆく、またぶーんと飛び出してゆくのもある。  

(中略)

「……あ、蜂の巣か」  官兵衛は眼をさました。とたんに自分の襟くびをつよくたたいて、廂(ひさし)の裏を赤い眼で見あげた。

ゆうべから彼は寝ていない。一睡のひまを偸(ぬす)むこともできなかったのである。そこでさっきから独りここへ逃避して、柱の下に背を凭(もた)せかけたまま、よいこころもちで居眠っていたのであった。
 
(吉川英治「黒田如水」 現行版では、講談社文庫があります)

※ 城の評定の間から「逃避」した描写から、この小説は始まっています。

こういう優しい文体は、どこから来るのだろうかと思いにふけったことがあります。
やがて、それは吉川氏の父母の愛情から来たことが分かりました。

( 「親のこころ 3」 という本で知りました。この本の概要を説明した出版社のウエブ・サイトです)
http://www.10000nen.com/?p=13929

吉川英治さんと言えば、「宮本武蔵」など歴史物小説でよく知られている方です。
ですが、生涯3度 同じ人物を小説に書いていることは、あまり知られていません。

「敦煌(とんこう)」などの小説で知られる、平成のはじめに亡くなった井上靖(いのうえ・やすし)さんも仰っていました。
「書いてみたい人物ですが、何かこう、運命的な出会いがないと書くことは出来ない人です」
残念なことに、作品を世に問うことなくお亡くなりになりました。 
(1907年 明治40年5月6日~1991年 平成3年1月29日


以下は、吉川英治さんによる、その人物を主人公にした作品リストです。
(古い作品ばかりなので、正確な 出版年や初出を調べるのに少し時間を要しました)

1)
小説「親鸞記」
 
1922年(大正11年)東京毎夕新聞社入社。 初めての新聞小説「親鸞記」を連載。
1923年(大正12年 1月) 単行本 『親鸞記』 東京毎夕新聞社より出版
 (原稿は、翌年の関東大震災で焼失したと言われています)

※1 現在は、絶版のようです。調べ切れませんでした。
※2 講談社版全集(旧版)
1966年(昭和41年)8月~1970年(昭和45年)9月 講談社から刊行(全56巻)
の 54巻(補巻 第1巻)にその名がありました。 (ウイキペディアより)

2)
単行本 『親鸞』全2巻  

1938年(昭和13年)7月~11月 (現、講談社より刊行)
 初出 題名 「親鸞聖人」 1934年 (昭和9年) (『名古屋新聞』など)

※「吉川英治歴史時代文庫」 講談社 で読むことができます。

3)
若き親鸞   
1949年 (昭和24年) 文章社(版以降 改題)
初出 「親鸞上人」(文芸雑誌『日の出』 新潮社 昭和10年6月・7月号) 

※ 現在は、絶版のようです。調べ切れませんでした。

















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